歯科コラムcolumn

MTAセメントとは? 〜歯科治療の未来を拓く革新的材料〜2024/07/22

こんにちは、皆さん。今日は歯科治療の最新技術のひとつ、「MTAセメント」についてお話しします。この名前を聞いたことがある方もない方も、これから紹介する情報を知っていただければ、MTAセメントの重要性とその驚くべき利点がわかるはずです。

MTAセメントの基本情報

まず、MTAセメントって何?という疑問がわくと思います。MTAとは「Mineral Trioxide Aggregate」の略です。1990年代に開発されたこの材料は、歯科治療の多くの場面で使われるようになりました。

構成と特性

MTAセメントは、以下のような成分で構成されています:

  • ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、酸化ビスマス、石膏など

これらの成分により、MTAセメントは非常に多くの優れた特性を持っています。例えば、生体適合性が高く、炎症反応を引き起こしにくいことが挙げられます。これは、特に根管治療などで重要です。また、硬化後も形状が安定し、水中でもその性能を維持します。さらに、抗菌性があり、細菌の侵入を防ぐ効果もあります。カルシウムが溶出することで骨の再生にも寄与することが考えらます。

MTAセメントの具体的な応用例

さて、MTAセメントがどのように使われているか具体的に見ていきましょう。

1.根管充填材

MTAセメントは根管治療で使われます。根管治療とは、歯の内部にある感染した組織を取り除き、空洞を埋める治療です。この治療にMTAセメントを使うと、治療の成功率が高まります。なぜなら、このセメントは根尖孔をしっかりと封鎖し、再感染を防ぐからできると考えられています。また固まるときに膨張しよりすき間を失くすことができます。【1】【2】。

2.歯根端切除術

歯根端切除術では、根尖部の病変を取り除いた後、その部分をMTAセメントで封鎖します。これにより、再感染を防ぎ、治療の成功率が向上します【3】。

3.穿孔修復

歯に穿孔ができた場合、MTAセメントを使ってその部分を修復します。例えば、根管治療中に誤って穿孔ができた場合でも、このセメントを使うことで迅速かつ確実に修復できます【4】。

4.逆行性根充填

根尖部からの逆行性の根充填材としてMTAセメントが使われます。これは、従来の根管治療が難しい場合に特に有効です。治療後の漏洩を防ぐ役割を果たします【5】。

5.間接・直接覆髄

露髄している歯髄を保護するために使われることもあります。MTAセメントは、歯髄を保護し、健康な状態を維持するのに非常に効果的です【6】。

    MTAセメントの利点

    MTAセメントの利点はたくさんあります。以下にその主な利点を挙げます:

    1.生体適合性

    MTAセメントは生体適合性が高く、組織との相性が良いため、炎症や拒絶反応が少なく、治癒がスムーズに進みます【1】【3】。

      2.抗菌性

      MTAセメントは抗菌性があり、細菌の侵入を防ぐことができます。これにより、治療後の感染リスクが低減されます【6】。

        3.硬化後の安定性

        MTAセメントは硬化後も形状が安定し、水中でもその性能を維持します。これにより、長期間にわたって治療効果を維持できます【7】。

          4.放射不透過性

          MTAセメントは放射不透過性を持っており、X線で簡単に確認できるため、治療の進行を正確にモニタリングできます【8】。

            5.封鎖性

            MTAセメントは、根尖孔や穿孔部位をしっかりと封鎖する能力が高く、再感染を防ぐ効果が優れています【2】【4】。

              まとめ

              MTAセメントの導入により、歯科医療は飛躍的に進化しています。生体適合性、抗菌性、硬化後の安定性、放射不透過性、封鎖性といった利点により、患者さんと歯科医師の双方にとって大きなメリットがあります。今後の技術革新により、さらに多くの可能性が広がることでしょう。最新の研究と臨床応用により、MTAセメントはその効果をさらに高め、歯科治療の未来を切り開いていくことが期待されます。

              このような革新的な材料が、どのようにして日常の歯科治療に応用されているのか、興味深く思われる方も多いでしょう。MTAセメントの多様な応用とその利点を理解することで、より効果的な治療法を選択できるようになります。

              このような歯を保存できる治療をご希望の方は調布歯科・矯正歯科の先生にぜひご相談ください。適応によってできないこともございますが、きちんと診断、またご説明をさせていだきます。

              参考文献

              1. Torabinejad M, et al. Mineral trioxide aggregate: a comprehensive literature review–Part II: leakage and biocompatibility investigations. J Endod. 2010.
              2. Parirokh M, Torabinejad M. Mineral trioxide aggregate: a comprehensive literature review–Part I: chemical, physical, and antibacterial properties. J Endod. 2010.
              3. Camilleri J. Investigation of the performance of MTA-based novel root canal sealers. Int Endod J. 2015.
              4. Darvell BW, Wu RC. “MTA—An Hydraulic Silicate Cement: Review update and setting reaction.” Dent Mater. 2011.
              5. Torabinejad M, Chivian N. Clinical applications of mineral trioxide aggregate. J Endod. 1999.
              6. Asgary S, Eghbal MJ. “Cytotoxic effects of MTA and Portland cement on human ECV304 endothelial cells.” Int Endod J. 2010.
              7. Damas BA, Wheater MA, Bringas JS, Hoen MM. Cytotoxicity comparison of mineral trioxide aggregates and EndoSequence bioceramic root repair materials. J Endod. 2011.
              8. Torabinejad M, Watson TF, Pitt Ford TR. “Sealing ability of a mineral trioxide aggregate when used as a root end filling material.” J Endod. 1993.
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