マイクロスコープによる精密歯周外科 — 手術器具を扱う術者の手元

— MESSAGE —

「できる限り、自分の歯を残したい。」
そのお気持ちに、誠実に応えたい。

当院の歯周外科は、患者さまお一人おひとりの想いに対して、
マイクロスコープによる精密治療と豊富な術式の選択肢を用いて、
誠実にお応えするための診療です。

歯周組織再生療法・歯周外科Periodontal Surgery & Regeneration

他院で「抜歯しかない」と説明された方へ

「もう残せない、抜くしかない」と告げられた歯であっても、
すぐに諦めず、まず一度ご相談いただきたいのが当院の考えです。

歯周病の進行で歯槽骨が大きく失われた歯は、これまでの治療法では保存が困難とされる場面がありました。けれども近年は、リグロス®・エムドゲイン®・Bio-Oss®などの再生材料、加えてマイクロスコープ下での精密な低侵襲フラップデザイン(MIST/M-MIST/EPPT など)が発展したことにより、従来は抜歯と判断されていた歯を温存できる可能性が以前より広がっています。

もちろん、どの歯でも必ず救えるという意味ではありません。骨欠損の形や全身の状態によっては、再生療法の適応外となる症例も存在します。それでも当院では、CT撮影・歯周ポケット測定などの精密検査で状態を三次元的に把握したうえで、本当に抜歯以外の選択肢がないのか、再生療法で残せる余地があるのかを、わかりやすくご説明いたします。

セカンドオピニオン目的でのご来院も歓迎しております。他院で撮影されたレントゲンやCTデータをお持ちであれば、より踏み込んだ具体的なご説明が可能です。

WEB診療予約はこちら042-444-0872

About歯周組織再生療法・歯周外科とは

失われた歯周組織を「再生する」/下がった歯ぐきを「覆い直す」

歯周病が進むと、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)・歯根膜(しこんまく)・セメント質といった「歯周組織」が徐々に壊され、やがて歯がぐらつき、最終的には抜歯となる症例もあります。さらに、歯周病の進行のほか、強すぎる歯みがきや矯正治療などをきっかけに歯ぐきが下がる「歯肉退縮」も、知覚過敏・歯が長く見える・むし歯になりやすいといった悩みの原因となります。

これらの問題に外科的にアプローチする領域が「歯周外科」です。当院では症例を大きく2つのカテゴリに整理し、それぞれの状態に最も合った術式と材料を選択しています。

当院の歯周外科 ― 2つの治療カテゴリ

CATEGORY 01

歯肉退縮被覆術 ― 下がってしまった歯ぐきを覆い直すための術式群

下がった歯ぐきによって歯根が露出した部分に、ご自身の歯ぐきや結合組織(CTG)を移動・移植して覆い直す術式の総称です。代表的な方法としてCAF(歯肉弁歯冠側移動術)VISTAテクニックTunnel法(トンネル法)があり、Cairo分類(RT1/RT2/RT3)の評価結果をもとに最適な術式を選びます。

CATEGORY 02

歯周組織再生療法 ― 失われた骨や歯根膜を再構築する

歯周病によって生じた骨の欠損部に対し、再生材料(リグロス®/エムドゲイン®/Bio-Oss®)を用いて、失われた歯槽骨・歯根膜・セメント質を再構築する治療です。再生材料の働きを最大限引き出すために、マイクロスコープによる拡大視野下で低侵襲フラップデザイン(PPT/SPPT/MPPT/MIST/M-MIST/EPPT)を併用します。

こんな方が対象となります

歯周病・歯肉退縮にお悩みの方
  • 中等度〜重度の歯周炎と診断された
  • 歯ぐきの炎症や出血が長期間続いている
  • 歯がぐらつくようになってきた
  • 他院で「抜歯が必要」と説明を受けた
  • 歯ぐきが下がり、歯が長く見えるようになった
  • 歯の根元が露出してしみる(知覚過敏)
  • 骨が溶けていると言われた(垂直性骨欠損)
  • 歯ぐきの黒い三角(ブラックトライアングル)が気になる

上記に当てはまる場合でも、必ずしも再生療法・被覆術が適応となるわけではありません。骨欠損の形状、全身の状態、口腔衛生のレベルなどにより治療効果は変動します。まずは精密検査を実施したうえで、適応可否を慎重に見極めます。

Materials再生療法に用いる主な材料

3つの再生材料を、症例に応じて使い分けます

歯周組織再生療法では、骨欠損の形や規模に合わせて、以下の再生材料を単独もしくは組み合わせて使用します。いずれの材料も、後述の各フラップデザインと併用することで、より安定した再生効果が期待できます。

リグロス®(歯周組織再生剤)による再生療法のイメージ リグロス®(トラフェルミン/FGF-2) 線維芽細胞増殖因子による歯周組織再生剤(イメージ) REGROTH® 局所投与 / 歯周組織再生用 作用機序(イメージ) FGF-2 が骨欠損部に作用 線維芽細胞・血管が増殖 歯槽骨・セメント質が再生 ※ 製品の使用感を示すイメージイラストです(実物の写真ではありません)

リグロス®(bFGF製剤)

リグロス®(一般名:トラフェルミン)は、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を有効成分とした、日本国内で開発・承認された歯周組織再生医薬品です(製造販売元:科研製薬株式会社)。

bFGFは細胞の増殖と血管新生を促す作用を持ち、歯周病でできた骨欠損部にリグロス®を投与することで、新たな歯槽骨・歯根膜・セメント質の形成が促されると期待されています。動物由来の成分は含まれていません。

エムドゲイン®(エナメルマトリックスタンパク)による再生療法のイメージ エムドゲイン®(エナメルマトリックスデリバティブ) セメント質・歯根膜・歯槽骨の再生を促す生体材料(イメージ) EMDOGAIN® Enamel Matrix Derivative gel 特徴(イメージ) • 歯根面に塗布してセメント質形成を促進 • 歯根膜・歯槽骨の再生環境を整える • 垂直性骨欠損・根分岐部病変に適応 ※ 製品の使用感を示すイメージイラストです(実物の写真ではありません)

エムドゲイン®(自由診療)

スイスのStraumann(ストローマン)社が製造する歯周組織再生材料で、海外を中心に長期にわたる臨床実績を有します。主成分は、ブタの歯胚から抽出・精製されたエナメルマトリックスタンパク質(EMD)で、歯の発生過程で重要な役割を担うタンパク質を治療に応用したものです。

ゲル状のため歯根面への塗布が容易で、手技も比較的シンプルです。遮断膜(メンブレン)を併用しなくてよい症例が多いことも特徴のひとつです。保険適用外の自由診療となります。

Bio-Oss®(脱タンパク化牛骨ミネラル)による骨補填のイメージ Bio-Oss®(脱タンパク化牛骨ミネラル) 骨欠損部に補填し、新生骨形成の足場となる人工骨補填材(イメージ) Bio-Oss® 骨補填材 / Granules 0.5g (size S) 顆粒拡大(イメージ) 粒径 0.25〜1mm(製品により選択) 多孔質構造 → 血液・細胞が浸潤しやすい 骨伝導性で長期に体内に残り足場となる ※ 製品の使用感を示すイメージイラストです(実物の写真ではありません)

Bio-Oss®/Bio-Gide®(自由診療)

スイスのGeistlich(ガイストリッヒ)社が製造する骨補填材で、世界で最も使用実績の豊富な材料のひとつです。ウシ骨から有機成分を取り除き、骨の無機成分(ハイドロキシアパタイト)に近い構造へと加工されています。骨欠損部の「足場」となり、新しい骨が形成されやすい環境を整えます。

同社製のBio-Gide®(吸収性コラーゲン膜)と組み合わせて用いることで、欠損部の形態を保持しながら再生を促進できます。実際には、リグロス®やエムドゲイン®と併用するのが一般的です。保険適用外の自由診療となります。

※ いずれの材料も、外科手術に伴う腫れ・痛み・出血・感染といったリスクを伴います。動物由来の材料については、ごくまれにアレルギー反応が生じる可能性があります。再生する量や範囲は、骨欠損の形態や全身の状態(喫煙・糖尿病など)により個人差が大きく、効果を保証するものではありません。

Cost費用と組み合わせ例

材料と術式は「単独」では使用しません

歯周組織再生療法と歯肉退縮被覆術は、必ず外科手術(フラップデザイン)と再生材料・移植材料をセットで実施します
例えば「リグロス®のみ」「Bio-Oss®のみ」といった使い方はせず、「術式 + 再生材料」を1セットとして治療を行います。
そのため当院では、各項目の単価をお示ししたうえで、症例ごとに必要となる組み合わせの合計金額を事前に書面でお見積りします。

項目別単価一覧(税込)

術式・材料 区分 費用(税込)
■ 再生材料・移植材料
リグロス®(bFGF製剤) 自由診療 ¥44,000
エムドゲイン®(エナメルマトリックス) 自由診療 ¥55,000
Bio-Oss®(バイオス/骨補填材) 自由診療 ¥33,000
Bio-Gide®(バイオガイド/遮断膜) 自由診療 ¥44,000
CTG(結合組織移植)
口蓋から自家結合組織を採取・移植
自由診療 ¥44,000
■ 歯肉退縮被覆術(Category 01)
CAF(歯肉弁歯冠側移動術) 自由診療 ¥77,000
VISTAテクニック 自由診療 ¥110,000
Tunnel法/MTT(トンネル法) 自由診療 ¥88,000
■ 再生フラップデザイン(Category 02)
低侵襲フラップ手術
MIST/M-MIST/EPPT/MPPT/SPPT/PPT 等
自由診療 ¥77,000 / 1歯
同一部位の2歯目以降は半額
(¥38,500/歯)

※ 上記は単価です。実際の治療では下記のとおり「術式+再生材料」の組み合わせとなります。
※ 低侵襲フラップ手術は、隣接する複数歯を一連の処置で行う場合、同一部位に限り2歯目以降は半額(¥38,500/歯)で計算します。
※ 自由診療は医療費控除の対象となります。
※ 別途、初診料・精密検査料・術前の歯周基本治療費用・術後管理料がかかります。

組み合わせの例と総額の目安

骨欠損や歯肉退縮の程度により、最適な組み合わせは症例ごとに変わります。下記は代表的なパターンと総額の目安です。実際の治療計画は、精密検査の結果に基づいて作成し、書面のお見積りをお渡しします。

CASE 01

1歯の歯周組織再生療法(標準パターン)

単一歯間の垂直性骨欠損に対する、低侵襲の再生療法
MIST(低侵襲フラップ手術)/1歯¥77,000
リグロス®(bFGF製剤)¥44,000
Bio-Oss®(骨補填材)¥33,000
合計(税込)¥154,000
CASE 02

2歯の歯周組織再生療法(広範囲タイプ)

隣接2歯にまたがる垂直性骨欠損に対する、EPPTを用いた完全乳頭温存型の再生療法
EPPT(低侵襲フラップ手術)/1歯目¥77,000
EPPT/2歯目(同一部位 半額)¥38,500
リグロス®(bFGF製剤)¥44,000
Bio-Oss®(骨補填材)¥33,000
Bio-Gide®(吸収性遮断膜)¥44,000
合計(税込)¥236,500
CASE 03

歯肉退縮を伴うケースの再生療法(VISTA+エムドゲイン+Bio-Oss の組み合わせ)

歯ぐきの退縮と骨欠損を一度に改善する、複合的なアプローチ
VISTAテクニック¥110,000
エムドゲイン®(歯根面処理/再生)¥55,000
Bio-Oss®(骨補填材)¥33,000
Bio-Gide®(吸収性遮断膜)¥44,000
合計(税込)¥242,000
CASE 04

1歯の歯肉退縮被覆(CAF+CTGの組み合わせ)

「歯ぐきが下がってきた」単独歯に対する、基本的で予知性の高い被覆パターン
CAF(歯肉弁歯冠側移動術)¥77,000
CTG(結合組織移植)¥44,000
合計(税込)¥121,000

※ 上記は標準的な組み合わせ例です。骨欠損の形態、退縮量、治療部位数、併用材料の有無により、実際の総額は変動します。
※ 別途、初診料・精密検査料(CT撮影含む)・術前の歯周基本治療費用・術後管理料が発生します。
※ 治療開始前に書面でお見積りをお渡しし、ご納得いただいてから治療を開始します。
※ 自由診療は医療費控除の対象となります。
※ 治療回数の目安:手術自体は1回ですが、術前の歯周基本治療に複数回、術後の経過観察・メンテナンスに継続的な通院が必要です。
※ 治療期間の目安:初診から手術完了まで数か月、骨や歯ぐきの安定評価までは半年〜1年程度を要します。

Recession Coverage歯肉退縮被覆術

下がった歯ぐきを覆い直す術式

歯肉退縮とは、本来の位置よりも歯ぐきが下がり、歯根面が露出してしまった状態をいいます。歯が長く見えるといった見た目の問題に加え、知覚過敏や根面う蝕の引き金にもなり得ます。現在は国際的にCairo分類(2011年)による評価が広く採用されており、術式選択の重要な指標となっています。

  • RT1
    歯間部の組織喪失なし
    歯間部の歯ぐきと骨組織が保たれているタイプ。完全な被覆(フルカバー)が見込めます。
  • RT2
    歯間部の組織喪失あり(軽度)
    歯間部に組織喪失はあるものの、その量が退縮量と同等以下にとどまるタイプ。部分的な被覆が見込めます。
  • RT3
    歯間部の組織喪失大
    歯間部の組織喪失が大きいタイプ。完全な被覆は難しく、術式選択の精度がより重要になります。

主な歯肉退縮被覆術のラインナップ

CAF(歯肉弁歯冠側移動術):歯肉退縮被覆のイラスト CAF — 歯肉弁歯冠側移動術 Coronally Advanced Flap:退縮した歯肉を切開し、冠側方向へ移動させて被覆する 1. 術前 歯肉退縮で歯根が露出 2. 切開・剥離 部分層弁を形成し冠側に動かす 3. 縫合・治癒 歯根を覆い縫合 → 治癒 ※ 術式の概念を示すイラストです(実際の症例写真ではありません)

CAF(歯肉弁歯冠側移動術)

Coronally Advanced Flap / Allen & Miller 1989, Zucchelli 2000s

露出した歯根の周囲に切開を入れ、歯肉弁(フラップ)を一旦剥離したうえで、歯冠側(歯の先端方向)へ引き上げることで露出歯根面を覆う術式です。Zucchelli法は縦切開を極力少なくする手法で、自然な歯肉ラインの再現が期待できます。多くの症例では、結合組織移植(CTG)を組み合わせることで、長期的な安定性と被覆率の向上が見込めます。

適応
Cairo RT1の単独歯〜複数歯、被覆側に角化歯肉が残る症例
メリット
自身の歯ぐきで色調が自然/予知性が比較的高い
注意点
角化歯肉幅が極端に少ない症例は適応外。RT2/RT3では完全被覆が困難なことがあります
区分
自由診療
VISTA(Vestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access)術式イラスト VISTA テクニック Vestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access:前庭部の小切開からトンネルを形成し歯肉を冠側へ 術式概念図(前歯部断面) 小切開 骨膜下トンネル ※ 術式の概念を示すイラストです(実際の症例写真ではありません)

VISTAテクニック

Vestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access / Zadeh 2011

歯と歯ぐきの境目には切り込みを入れず、口腔前庭部(口唇側の奥)に1か所だけ小さな縦切開を加え、そこを起点に骨膜下へトンネル状の空間を作って歯ぐきを歯冠側へ移動させる術式です。歯間乳頭(歯と歯のあいだの三角の歯ぐき)を切らずに残せるため、前歯部など複数歯にまたがる審美領域の歯肉退縮治療で選択されやすい術式です。CTGや同種真皮(AlloDerm等)を併用するのが一般的です。

適応
複数歯にわたる歯肉退縮、上顎前歯部等の審美領域、Cairo RT1〜一部RT2
メリット
歯間乳頭を切らない/前庭部の切開のみで目立たない/複数歯を同時処置
注意点
視野が限られるため術者経験と精密器具が必要。重度RT2/RT3では限界があります
区分
自由診療
トンネルテクニック(低侵襲トンネル形成術)イラスト トンネルテクニック 歯肉溝から器具を挿入しトンネルを形成、結合組織を移植する低侵襲術式 トンネル(骨膜下) 結合組織移植片を挿入 専用キュレット ※ 術式の概念を示すイラストです(実際の症例写真ではありません)

Tunnel法/MTT(改良型トンネル法)

Tunnel Technique / Allen 1994, Zabalegui 1999, Zuhr 2020s

歯間乳頭にメスを入れず、歯肉溝(歯と歯ぐきの境目)から専用器具を差し入れて歯ぐきの内側にトンネル状の空間を形成し、結合組織(CTG)を挿入してから歯ぐきを歯冠側に引き上げて固定する術式です。VISTAと比較してさらに切開が少なく、より低侵襲なアプローチといえます。MTT(Modified Tunnel Technique)では、トンネルをより広範囲に形成し、歯肉弁の歯冠側移動量も大きく取れるよう改良されています。

適応
単独歯〜複数歯の歯肉退縮、Cairo RT1中心、歯間乳頭を温存したい審美領域
メリット
切開が最小限/術後の痛み・腫れが軽減される傾向/創傷治癒が良好
注意点
視野が極めて限られるためマイクロスコープ・拡大鏡が望ましい。歯ぐきが薄い症例では穿孔リスクがあります
区分
自由診療
FGG(遊離歯肉移植術)/LPF(側方歯肉弁移動術)イラスト FGG — 遊離歯肉移植術 口蓋から角化歯肉片を採取し、レシピエント部位に移植して角化歯肉幅を増加させる ① ドナー(口蓋) 採取部位 ② 角化歯肉片 ③ レシピエント(移植部位) 移植片を縫合 角化歯肉幅
増加 角化歯肉幅 増加 ※ 術式の概念を示すイラストです(実際の症例写真ではありません)

FGG(遊離歯肉移植)/LPF(歯肉弁側方移動術)

FGGは上顎口蓋部から角化歯肉を切り取って移植する術式で、歯根を覆うこと自体ではなく角化歯肉幅(しっかりした歯ぐきの幅)を確保することが主な目的となります。CAFやVISTAを行う前段階の処置として用いられることもあります。LPFは隣接部位の歯ぐきを横方向へスライドさせて覆う古典的な術式で、現在では適応となる症例は限定的です。

注意点
FGGは移植部が周囲と色調が異なる(白っぽくなる)ことがあり、審美領域では慎重に判断します
区分
自由診療

Regeneration Flap再生療法のフラップデザイン

「いかに切開を減らすか」が再生効果を左右する

マイクロスコープ視野下での精密な再生療法

歯周組織再生療法では、リグロス®やエムドゲイン®などの再生材料を骨欠損部に用いますが、その効果を最大限に引き出すには、フラップデザイン(切開・剥離の手法)が決定的に重要になります。

具体的には、

  • 歯間乳頭を切らずに温存すること
  • 切開・剥離を最小限にとどめ、血餅(血液の塊)の安定性を確保すること
  • 一次閉鎖(フラップを隙間なく閉じる縫合)を確実に行うこと

これらが成功の鍵を握ります。こうした条件を満たすため、近年はマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の拡大視野下で行う低侵襲フラップデザインが国際的な標準術式になりつつあります。当院では症例ごとに最適な術式を選択しています。

主な低侵襲フラップデザインのラインナップ

FLAP 01

PPT(歯間乳頭保存術)

Papilla Preservation Technique / Takei et al. 1985

歯周組織再生療法におけるフラップデザインの出発点となった術式です。骨欠損部の歯間乳頭を切り離さず、頬側(外側)のフラップと一体のまま保存する切開法を採ります。舌側(内側)の歯肉溝に半月状の切開を入れ、歯間乳頭を頬側フラップに含めて翻転、骨欠損部を露出させた状態で再生材料を応用します。

適応
歯間部が広い(おおむね2mm以上)症例の垂直性骨欠損
メリット
歯間乳頭を保存し、術後の歯間閉鎖と審美性が向上
注意点
狭い歯間部には適用が困難
FLAP 02

SPPT(簡易型歯間乳頭保存術)

Simplified Papilla Preservation Technique / Cortellini, Prato & Tonetti 1999

PPTやMPPTでは広い歯間部にしか対応できなかった弱点を解決し、狭い歯間部(2mm未満)にも応用できるように改良された術式です。歯間乳頭の頬側中央から舌側方向へ斜め(diagonal)に切開を加えることで、狭い歯間部であっても歯間乳頭を保ったままフラップを翻転できます。臼歯部や前歯部の狭い歯間に対する再生療法において、現在広く用いられているスタンダードな術式のひとつです。

適応
歯間部が狭い(2mm未満)症例の垂直性骨欠損、臼歯部
メリット
適応範囲が広く、狭い歯間部でも歯間乳頭を保存可能
注意点
マイクロスコープ下での精密な切開・縫合が望まれます
FLAP 03

MPPT(改良型歯間乳頭保存術)

Modified Papilla Preservation Technique / Cortellini, Prato & Tonetti 1995

PPTをさらに発展させ、広い歯間部(2mm以上)の症例で、歯間乳頭を完全に保存したままフラップを翻転する術式です。頬側の歯肉溝から歯間乳頭の基部を水平方向に切開し、歯間乳頭を舌側フラップ側に含めて翻転します。骨欠損部への良好なアクセスを確保しつつ、再生療法で不可欠な歯間部の一次閉鎖を確実に行えるのが特徴です。前歯部の審美領域における再生療法で、特に有用と評価されています。

適応
歯間部が広い(2mm以上)症例の垂直性骨欠損、前歯部審美領域
メリット
歯間乳頭を完全保存しつつ骨欠損部への良好なアクセスを確保
注意点
狭い歯間部では適用が困難
FLAP 04

MIST(低侵襲外科手技)

Minimally Invasive Surgical Technique / Cortellini & Tonetti 2007

歯周組織再生療法における「低侵襲化」という概念を確立した術式です。骨欠損部に隣り合う単一歯間のみに切開と剥離を限定し、それ以外の部位には手を加えないことで、組織への侵襲を最小限に抑えます。歯間乳頭はSPPTまたはMPPTの切開法で温存し、フラップ剥離量も骨欠損部が見える必要最小限に留めます。マイクロスコープによる拡大視野下での精密操作が前提となります。

適応
限局型の垂直性骨欠損(主に1〜2壁性、3壁性骨欠損)
メリット
術後の痛み・腫れが軽減される傾向/創傷治癒が良好/患者負担が少ない
注意点
マイクロスコープと精密器具が必須/広範囲の骨欠損には不向き
FLAP 05

M-MIST(改良型低侵襲外科手技)

Modified Minimally Invasive Surgical Technique / Cortellini & Tonetti 2009

MISTをさらに低侵襲化した発展型の術式です。骨欠損部の頬側のみで最小限のフラップを翻転し、舌側フラップと歯間乳頭は一切剥離しない点が大きな特徴です。歯間乳頭が頬側・舌側の双方から血流を保たれたまま温存されるため、血餅の安定性が極めて高く、再生材料の効果も最大限に引き出されると報告されています。現在の歯周組織再生療法を代表する低侵襲術式のひとつです。

適応
単一歯間の垂直性骨欠損(特に3壁性骨欠損、深い欠損)
メリット
血餅安定性が極めて高い/術後の腫れ・痛みが最小限とされる/歯間乳頭の退縮(ブラックトライアングル)が起こりにくい
注意点
マイクロスコープが事実上必須。高度な術者技術と専用器具が必要
FLAP 06

EPPT(完全歯間乳頭保存術)

Entire Papilla Preservation Technique / Aslan & Buduneli 2017〜

最も新しい世代の低侵襲フラップデザインのひとつです。骨欠損部の歯間乳頭にはいっさい切開を加えず、完全に保存することを目的とした術式となります。骨欠損のある歯間部から少し離れた隣接歯のさらに遠位(奥側)に小切開を入れ、そこからトンネル状にアクセスして骨欠損部に到達し、再生材料を応用します。歯間乳頭への外科的侵襲がきわめて少ないため、術後の歯間部退縮(ブラックトライアングル)リスクを大きく低減できる可能性があるとされています。

適応
限局型の垂直性骨欠損で、歯間乳頭の温存が特に重要な審美領域
メリット
歯間乳頭が完全に温存される/術後の審美的予後が良好な可能性/血餅安定性が高い
注意点
マイクロスコープが事実上必須。きわめて高度な術者技術が必要。エビデンスは現在も蓄積中

※ 上記の各フラップデザインは、いずれもリグロス®・エムドゲイン®・Bio-Oss®などの再生材料と組み合わせて用います。術後の腫れ・痛み・出血・感染といったリスクは外科処置に共通であり、再生量や効果には個人差があります。骨欠損の形態に応じて適応となる術式は異なり、すべての症例で一律の結果が得られるわけではありません。

Microscopeマイクロスコープの重要性

肉眼の10〜25倍の拡大視野で、ミリ以下の精度を追求する

MIST・M-MIST・EPPTといった現代の低侵襲フラップデザインは、
マイクロスコープの拡大視野下での精密操作なくしては成り立ちません。

マイクロスコープが歯周外科にもたらすメリット

マイクロスコープ視野下での精密操作

高倍率視野のもとでの精密な切開・剥離

マイクロスコープは肉眼の10倍〜25倍の拡大視野を提供します。肉眼やルーペでは確認できない歯肉繊維・骨欠損の細部・不良肉芽組織を一つひとつ識別しながら、残すべき組織は傷つけず、取り除くべき組織は確実に処理する、選択的な操作が可能になります。MIST・M-MIST・EPPTのような「ミリ以下の精度が求められる術式」は、マイクロスコープなしでは実質的に成立しません。

極細縫合糸による精密縫合

極細縫合糸を用いた確実な一次閉鎖

歯周組織再生療法では、6-0〜8-0といった髪の毛よりも細い縫合糸を使った精密な縫合を行います。フラップを隙間なく閉じる「一次閉鎖」は、再生療法の成功率を左右する重要なポイントの一つです。マイクロスコープの拡大視野下であれば、極細糸での緻密な縫合が可能となり、血餅(フィブリンクロット)の安定性も確保しやすくなります。

マイクロスコープのメリット

患者さまにとっての主なメリット

  • 低侵襲化により、術後の痛み・腫れの軽減が期待される
  • 創傷治癒の促進が期待される
  • 再生材料(リグロス®・エムドゲイン®・Bio-Oss®等)の効果がより安定して発揮される可能性
  • 歯間乳頭の保存による審美的予後の向上が期待される
  • 歯肉退縮被覆術(VISTA・Tunnel法等)でも視野確保に有用

※ マイクロスコープを使ったからといって、必ず再生が得られるという意味ではありません。再生療法の結果は、骨欠損の形、患者さまの全身状態(糖尿病・喫煙など)、口腔衛生の状況、咬合状態など、多くの要因の影響を受けます。当院では治療前に十分な検査と説明を行ったうえで、術式の適応を判断しています。

マイクロスコープ精密治療について

Flow治療の流れ

初診から治療完了までの基本的な流れ

  • 01
    カウンセリング
    お悩みやご希望、既往歴、生活習慣(喫煙の有無など)を丁寧に伺い、現状の治療選択肢をご説明します。
  • 02
    精密検査
    レントゲン・CT撮影、歯周ポケット測定、口腔内写真、歯型採取などを行い、骨欠損や歯肉退縮の形態を立体的に把握します。
  • 03
    歯周基本治療
    ブラッシング指導や歯石除去(SRP)など、まずは炎症を鎮める基本治療から開始します。
  • 04
    再評価
    基本治療終了後に再度検査を行い、適応する術式(CAF/VISTA/Tunnel/MIST/M-MIST など)と再生材料の組み合わせを最終的に決定します。
  • 05
    外科手術
    局所麻酔下、マイクロスコープによる拡大視野で、選択した術式を実施します。1部位あたりの所要時間はおよそ1〜2時間が目安です。
  • 06
    術後管理
    術後1〜2週間のタイミングで抜糸・消毒・経過観察を行います。骨や歯肉が安定するまでには数か月〜1年ほどかかります。
  • 07
    メンテナンス
    3〜4か月おきの定期検診とプロフェッショナルケアを継続して受けていただきます。長期的な安定を保つうえで、最も大切なプロセスです。

治療後に気をつけていただきたいこと

メンテナンスの重要性
  • 術後数日は手術部位を強く磨かない
  • 処方された洗口剤で清潔を保つ
  • 術後1〜2週間は固いもの・刺激物を避ける
  • 喫煙・飲酒は治癒を妨げるため控える
  • 処方薬は指示通りに服用する
  • 強い腫れ・痛み・出血がある場合は早めに連絡

歯周組織再生療法や歯肉退縮被覆術で組織がいったん回復しても、歯周病が再度進行した場合は、再生した骨や移植した歯ぐきが再び失われる可能性があります。毎日のセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアを継続することが、長期的な安定への鍵となります。

予防歯科・定期検診

— SECOND OPINION —

他院で「抜歯しかない」と告げられた方も、
まずは一度ご相談ください。

CT撮影や歯周ポケット測定などの精密検査で骨欠損の形態を三次元的に評価したうえで、
本当に抜歯以外に道がないのか、再生療法で残せる余地があるのかを、わかりやすくご説明します。
セカンドオピニオン目的でのご相談も歓迎しております。

Notes適応とリスク・費用について

適応となるケースと、慎重に判断が必要なケース

歯周組織再生療法や歯肉退縮被覆術は、すべての方・すべての歯で効果が得られる治療ではありません。骨欠損や退縮の形態、全身の状態、生活習慣、セルフケアの状況によって結果に違いが生じます。

適応となりやすい主なケース

  • 垂直性骨欠損のある中等度〜重度歯周炎
  • Cairo RT1〜RT2の歯肉退縮
  • 歯周基本治療で炎症がコントロールされている
  • セルフケア・メンテナンスを継続できる
  • 全身的に外科処置が可能な状態

慎重に判断する必要があるケース

  • 喫煙者(治癒・再生が妨げられやすい)
  • コントロール不良の糖尿病
  • 水平的な骨欠損が主体のケース
  • 重度の根分岐部病変・歯根破折
  • 口腔衛生状態の改善が難しい
  • 妊娠中・授乳中、特定の薬剤服用中の方

費用と組み合わせ例はこちら

想定される副作用・リスクについて

歯周外科処置全般で起こりうるリスク・副作用として、次のような項目があります。事前のカウンセリングで一つずつご説明し、ご納得いただいたうえで治療を開始します。

  • 術後の腫れ・痛み・内出血斑(あざ)
  • 出血・感染
  • 知覚過敏(一時的なものが多いとされます)
  • 歯肉退縮の再発、被覆組織の一部後戻り
  • 再生量・被覆率の個人差(結果を確約できません)
  • 動物由来材料(エムドゲイン®・Bio-Oss®・Bio-Gide®等)によるまれなアレルギー反応
  • 結合組織採取部(口蓋)の術後不快感、知覚異常(まれ)
  • 喫煙・糖尿病等により治癒が遅延する可能性
  • 縫合部の離開(術後早期に裂開する場合)

症例写真(治療前後の状態)に関しては、院内にて個別にお見せしながら、想定される結果やリスクとあわせてご説明します。

医師紹介

24時間受付WEB診療予約
042-444-0872
24時間受付WEB診療予約