歯科コラムcolumn

小児矯正はいつから?I期・II期治療の違いと開始のタイミングを歯科医師が解説|調布2026/10/18

「子どもの歯並びが気になるけれど、矯正はいつから始めればいいの?」「小児矯正はI期・II期と分かれているらしいが、何がどう違うの?」——お子さまの矯正を検討する保護者の方から、当院(調布)にも同じようなご相談が多く寄せられます。結論からお伝えすると、小児矯正の開始時期は「歯並びの状態」と「あごの成長の段階」で決まり、決まった年齢に一律で始めるものではありません。まずはお子さまの状態を歯科医師が確認し、いま治療を始めるべきか、それとも経過を見守るべきかを判断することが出発点になります。

この記事では、小児矯正のI期治療(1期)とII期治療(2期)の違い、始める時期の目安と受診の目印、装置の種類、期間・費用・医療費控除、そして保護者が後悔しないために判断しておきたいポイントまでを、公的機関の情報も参照しながら順を追って解説します。読み終えたときに「わが家はいつ相談に行けばよいか」がイメージできることを目指した内容です。

小児矯正とは?I期治療とII期治療の2段階を理解する

小児矯正とは、乳歯から永久歯へと生え変わる成長期の子どもを対象に、歯並びと噛み合わせ(咬合)を整える治療の総称です。大人の矯正と大きく異なるのは、あごの骨がまだ成長する余地を残している点にあります。この成長の力を利用できることが、子どもの時期に矯正を行う最大の意義です。

小児矯正は一般に、二つの段階に分けて考えられます。前半の「I期治療(1期治療)」は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に行い、あごの発育を誘導してスペースやバランスを整える準備の段階です。後半の「II期治療(2期治療)」は、永久歯が生えそろってから、一本一本の歯を精密に並べる仕上げの段階です。厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」でも、乳歯が残っている年齢では成長を利用して骨格的な問題の解消を図り、永久歯列ではマルチブラケット装置による歯の再配列を行うと説明されており、これをそれぞれI期治療・II期治療と呼んでいます(e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」)。

大切なのは、すべてのお子さまが必ずII期治療まで進むわけではないということです。I期治療で生え変わりが順調に進んだ場合には、II期治療が不要になることもあります。逆に、I期治療を行っても、永久歯が生えそろう段階で歯を精密に整える必要が出てくるケースもあります。だからこそ、はじめに「今のお子さまにどの段階の関わりが必要か」を見極めることが重要になるのです。

なぜ子どもの時期が意味を持つのかというと、あごの骨は成長のタイミングが限られているからです。乳歯だけの時期(乳歯列期)、乳歯と永久歯が混ざる時期(混合歯列期)、永久歯だけになる時期(永久歯列期)と移り変わるなかで、あごの成長を積極的に使えるのは混合歯列期までが中心です。永久歯が生えそろい成長も落ち着いた後では、骨格そのものへの働きかけが難しくなり、歯を動かして整える治療が主体になります。この「成長の窓」を活かせるかどうかが、子どもの矯正と大人の矯正の分かれ目であり、早めの相談が選択肢を広げる理由でもあります。ただし早ければ良いというものでもなく、始めるのに適した時期は不正咬合の種類によって異なります。

小児矯正はいつから始める?何歳からが目安か

「小児矯正は何歳から始めるべきか」という問いに、一つの正解はありません。一般的にI期治療は乳歯と永久歯が混ざり始める6〜7歳前後から検討され、前歯の永久歯が生えてくる時期が一つの目安とされています。ただし、受け口(反対咬合)のように早い段階での対応が検討されるケースもあれば、しばらく成長を見守ってから判断するケースもあり、開始時期はお子さまの状態によって幅があります。

年齢だけで決めるのではなく、次のような様子が見られたら、一度歯科医師に相談してみる目安になります。あくまで受診を検討するきっかけであり、これらがあるからといって直ちに治療が必要とは限りません。

受診を検討する目印(あくまで相談のきっかけ)

上の前歯が下の前歯より内側にある(受け口のように見える)、上の前歯が大きく前に出ている、歯と歯の間に大きなすき間や重なり(叢生)がある、前歯が閉じない(開咬)、噛んだときに上下の中心がずれる、口がいつも開いている・よく口呼吸をしている、乳歯が早く抜けた・なかなか抜けない——こうしたサインが気になる場合は、早めに相談しておくと、治療が必要かどうか、必要ならいつ始めるのが良いかを一緒に考えられます。学校の歯科健診で「噛み合わせ」について指摘を受けたときも、相談の良いタイミングです。

なお、混合歯列期を過ぎて永久歯が生えそろった中学生以降は、I期治療の対象時期を過ぎているため、II期治療(本格矯正)を軸に検討することになります。「もう手遅れではないか」と心配される保護者の方もいますが、永久歯列になってからでも歯を並べる治療は可能です。時期によって選べる方法が変わるだけですので、気になった時点で相談することをおすすめします。

相談のきっかけとして分かりやすいのは、乳歯から永久歯への生え変わりが始まる時期です。特に、前歯が生えかわったときに歯並びの重なりが気になったり、上下のかみ合わせがずれて見えたりしたら、一度専門的に診てもらうとよいタイミングです。3歳児健診や学校の歯科健診で歯並び・かみ合わせについて指摘を受けた場合も、放置せずに相談しておくと、対応に適した時期を逃さずに済みます。逆に、いま気になる点がなければ、定期的なむし歯予防の通院のなかで歯並びの様子もあわせて見てもらう、という関わり方でも構いません。大切なのは、心配を一人で抱え込まず、気軽に相談できる状態をつくっておくことです。

I期治療で行うこと|あごの成長を活かす装置と目的

I期治療の目的は、あごの成長を利用して、上下のあごのバランスや歯が並ぶスペースを整える「土台づくり」です。歯そのものをきれいに並べることよりも、将来永久歯が正しく並びやすい環境を用意することに主眼があります。

I期治療で使われる主な装置

代表的なものに、あごの幅を横方向に広げてスペースを確保する「拡大装置」、上あごの成長を抑えたり前方への誘導を行う「ヘッドギア」や「機能的矯正装置(バイオネーターなど)」、下あごの前方成長を抑える「チンキャップ」などがあります。これらの多くは取り外し式で、就寝時や自宅で使うタイプも少なくありません。お子さまの状態によって、部分的にワイヤーの装置を用いることもあります。どの装置を選ぶかは、不正咬合の成り立ち(骨格・歯・機能のどこに原因があるか)を検査で確かめたうえで決まります。

ここで誠実にお伝えしておきたいのは、成長を利用した治療にも限界があるという点です。e-ヘルスネットでは、上あごが前に出ているケース(上顎前突)への機能的装置について、海外の大規模研究で噛み合わせの改善は認められた一方、骨格そのものの改善は平均的には大きくなかったと紹介されています。つまり、I期治療は万能ではなく、効果には個人差があります。過度な期待をせず、「今できる準備を整える」という位置づけで臨むことが、結果的に満足につながります。

II期治療で行うこと|永久歯を正しく並べる仕上げ

II期治療は、永久歯が生えそろった後に、一本一本の歯を精密に動かして噛み合わせを仕上げる段階です。中学生前後から始まることが多く、大人の矯正と基本的な考え方は共通します。

II期治療で使われる主な装置

中心となるのは、歯の表面に小さなブラケットを接着し、細いワイヤーの弾力で歯を動かす「マルチブラケット装置」です。長い歴史のなかで改良が重ねられ、治療効果の信頼性が高い方法として世界中で使われています。近年は、目立ちにくい透明なブラケットや、歯の裏側に装置をつける方法、透明な取り外し式のマウスピース型矯正装置も選択肢になっています。マウスピース型については、ある種の不正咬合で効果が報告されている一方、適応やお子さまの装着協力によって結果が左右されるため、どの方法が向くかは診察のうえで判断します。

I期治療を経てきたお子さまの場合、II期治療は土台が整った状態から始められるため、治療がスムーズに進みやすいことがあります。ただし前述のとおり、I期治療で生え変わりが順調に進めばII期治療が不要になることもあり、必ず両方を行うわけではありません。

小児矯正の期間・通院・痛みの目安

治療期間は、お子さまのあごの状態や治療内容によって大きく変わります。あくまで一般的な目安として、次の表を参考にしてください。実際の期間は診察のうえで個別にご説明します。

段階 おおよその時期 治療期間の目安 主な通院間隔
I期治療 6〜12歳頃(混合歯列期) 約2〜4年(経過観察を含む) 1〜2か月に1回程度
経過観察 永久歯が生えそろうまで 数か月〜数年 数か月に1回程度
II期治療 12歳前後〜 約1〜3年 1か月に1回程度

痛みについては個人差がありますが、装置をつけた直後や調整の後に、数日間、歯が浮くような感覚や噛んだときの違和感が出ることがあります。多くは徐々に和らぎますが、つらいときは我慢させず、歯科医師に相談してください。装置が粘膜に当たって痛い場合の調整や、痛みへの対処法もあります。「痛いのが心配」というお子さまには、痛みへの不安を軽くする工夫について事前にご説明します。

小児矯正のメリットとデメリット(注意点)

小児矯正には、成長期ならではの利点がある一方で、注意しておきたい点もあります。両面を理解したうえで検討することが、後悔しない選択につながります。

メリット(期待できること) デメリット・注意点
あごの成長を利用でき、永久歯が並ぶスペースを整えやすい 治療期間が長くなりやすく、経過観察を含め年単位で通院する
抜歯を避けられる可能性が高まる場合がある 効果には個人差があり、成長のしかたは完全には予測できない
口呼吸や舌の癖など、機能面の改善につなげられることがある 装置の使用にお子さま自身の協力が必要(取り外し式は特に)
コンプレックスの軽減につながることがある 装置周りは磨き残しが増えやすく、むし歯・歯肉炎の予防が重要

特に見落とされがちなのが、矯正中のむし歯・歯周病予防です。装置がついていると歯みがきが難しくなり、汚れがたまりやすくなります。当院では、矯正中のブラッシング方法やフッ素の活用についてもあわせてお伝えしています。関連して、子どものむし歯予防とフッ素の考え方もご参照ください。矯正はゴールではなく、健康な口を長く保つための過程だと捉えると、日々のケアの大切さが見えてきます。

費用・医療費控除・保険適用はどうなる?

小児矯正は、一般的に公的医療保険が適用されない自由診療(自費診療)です。そのため費用は歯科医院や治療内容、使用する装置によって異なります。また治療期間が長く、I期治療とII期治療で費用が分かれることが多い点も、大人の矯正とは異なる特徴です。費用・期間・通院回数・起こりうるリスクや副作用・効果の個人差については、検査のうえで一人ひとりに合わせてご説明します。具体的な金額は状態によって変わるため、料金は診察のうえで提示する形をとっています。当院の費用の考え方は料金表のページもご確認ください。

保険が使えるケースは限られる

ほとんどの小児矯正は自由診療ですが、例外があります。国が定める先天性の疾患(唇顎口蓋裂など)や、外科手術を要するような顎変形症に起因する不正咬合の矯正歯科治療は、指定された医療機関で公的医療保険の対象となる場合があります。該当するかどうかは専門的な判断が必要ですので、心当たりがある場合は相談時にお伝えください。

子どもの矯正は医療費控除の対象になりやすい

費用面で見逃せないのが医療費控除です。国税庁は、発育段階にある子どもの成長を阻害しないために行う不正咬合の歯列矯正のように、年齢や目的からみて必要と認められる歯列矯正の費用は医療費控除の対象になるとしています。一方で、容ぼうを美化するための矯正費用は対象になりません(国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」)。子どもの矯正は噛み合わせの改善を目的とすることが多いため、対象と認められやすい傾向があります。通院にかかる交通費(付き添いが必要な場合の付添人分を含む)も対象になりますが、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外です。医療費控除を受けるには、支払った医療費の領収書を保管し、確定申告で手続きする必要があります。矯正の治療費を歯科ローンで支払う場合は、契約が成立した年の医療費控除の対象として扱われます(金利・手数料分は対象外)。詳しい取り扱いや申告方法は、その年の最新の情報を国税庁や税務署でご確認ください。

後悔しないために|保護者が判断する5つのチェックポイント

ここまでの内容を、保護者の視点で「いつ・何を判断するか」に落とし込みます。小児矯正で後悔しないために、次の5つを意識しておくと迷いが減ります。

1. 迷ったら「治療開始」より先に「相談」を。相談=すぐ治療開始ではありません。まずは状態を確認し、今動くべきか経過を見るべきかを知ることが目的です。2. 効果には個人差があると理解しておく。成長を使う治療は予測に限界があり、「必ずこうなる」とは言い切れません。見通しと限界の両方を説明してくれるかを確認しましょう。3. I期とII期の全体像と、費用の分かれ方を最初に確認する。後から「II期で追加費用が」と驚かないよう、総額の考え方を早めに把握します。4. 通院と自宅ケアを続けられそうか、家庭の状況も含めて考える。取り外し式装置は本人の協力が前提です。5. むし歯・歯肉炎の予防を並行する前提で臨む。矯正中こそ予防が重要です。

これらを踏まえ、疑問点はメモにして相談時に質問するのがおすすめです。お子さま本人の「やってみたい/不安」という気持ちも、続けやすさを大きく左右します。治療に不安が強いお子さまには、できるだけ痛みや怖さに配慮した対応についてもご相談いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q. 小児矯正はいつから始めるのがよいですか?

A. 一般的にはI期治療は6〜7歳前後から検討されますが、開始時期はお子さまの歯並びとあごの成長段階によって異なります。年齢だけで決めず、気になるサインがあれば一度ご相談ください。

Q. 小児矯正は何歳まで受けられますか?

A. I期治療は混合歯列期(おおむね小学生年代)が対象で、永久歯が生えそろった後はII期治療(本格矯正)が中心になります。中学生以降でも歯を並べる治療は可能で、時期によって選べる方法が変わります。

Q. I期治療とII期治療の違いは何ですか?

A. I期治療はあごの成長を利用して土台(スペースやバランス)を整える準備段階、II期治療は永久歯を一本ずつ精密に並べる仕上げ段階です。I期で順調に生え変わればII期が不要になることもあります。

Q. 費用の目安はどのくらいですか?

A. 小児矯正は自由診療のため、治療内容や装置によって費用は異なります。I期とII期で分かれることが多く、具体的な金額は検査・診察のうえでご提示します。

Q. 保険は使えますか?

A. 一般的な小児矯正は保険適用外です。ただし、国が定める先天性疾患や顎変形症に起因する不正咬合など、限られたケースでは指定医療機関で保険が適用される場合があります。

Q. 医療費控除の対象になりますか?

A. 発育段階の子どもの不正咬合を改善する目的の矯正は、医療費控除の対象になりやすいとされています。容ぼうの美化目的は対象外です。詳細は国税庁の情報をご確認ください。

Q. 痛みはありますか?

A. 個人差がありますが、装置の装着直後や調整後の数日間、歯が浮くような違和感が出ることがあります。多くは徐々に和らぎます。つらいときは我慢せずご相談ください。

Q. 小児矯正にデメリットはありますか?

A. 治療期間が長くなりやすいこと、効果に個人差があること、装置周りでむし歯・歯肉炎のリスクが上がることなどが挙げられます。予防を並行しながら進めることが大切です。

Q. マウスピース型でもできますか?

A. 永久歯列が整った段階で、適応によっては取り外し式のマウスピース型矯正装置を用いることがあります。向き不向きは診察のうえで判断します。

自由診療について

  • 治療内容: 小児矯正(I期治療)と、必要に応じた成人と同様の本格矯正(II期治療)。
  • 費用: 自由診療(保険適用外)の治療は、内容・本数・素材等により費用が異なります。標準的な費用は料金表をご確認ください。
  • 期間・回数の目安: 成長の段階に合わせて治療期間は年単位になることが多く、定期的な通院が必要です。II期治療が必要になるかどうかは成長により異なります。
  • 主なリスク・副作用: 装置による痛み・違和感、装置の使用状況によって結果が左右されること、清掃不良によるむし歯・歯周病、治療後の後戻り。効果や経過には個人差があります。
  • お問い合わせ: アクセス・診療時間/お電話 042-444-0872

お子さまの歯並びが気になる方は当院(調布)へご相談ください

「そろそろ相談したほうがよいのか」「今は様子を見てよいのか」——迷ったときこそ、一度歯科医師に状態を見てもらうことが、後悔しない第一歩です。受診を検討する目安は、前述の「受診を検討する目印」を参考にしてください。当院では、はじめに検査でお子さまの噛み合わせの状態を確認し、治療が必要かどうか、必要な場合はI期・II期の見通しや費用の考え方まで、診察のうえでていねいにご説明します。一般的な流れとしては、相談・検査 → 診断と治療方針の説明 → ご家庭で検討 → 合意のうえで治療開始、という順序で進みます。

ご予約・お問い合わせは、アクセス・診療案内のページからご確認いただけます。まずはお気軽にご相談ください。無理に治療を勧めることはありませんので、疑問や不安をそのままお持ちください。

日曜も診療しています(祝日は休診)。診察のうえ、お口の状態と選択肢をご説明します。まずはご相談ください。

参考文献・出典

監修:加藤 龍史(矯正歯科担当医・歯学博士/医療法人社団デルタ)プロフィール

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療方針は診察のうえ個々の状態により異なります。医療費控除や保険の取り扱いは制度改定により変わる場合がありますので、最新の情報は国税庁・厚生労働省等の公的機関でご確認ください。詳しくは歯科医師にご相談ください。

24時間受付WEB診療予約