歯科コラムcolumn
セラミック治療の長期予後について2025/09/07
――調布歯科矯正歯科の考え方
セラミックは本当に長持ちするのか?
セラミック治療は「自然な見た目」と「金属を使わない安心感」から、多くの患者さんに選ばれています。では実際にどれくらいの期間使えるのでしょうか。
従来、「セラミックは割れやすいのでは?」と不安に思われる方もいましたが、近年の研究はその考えを大きく変えています。正しい材料選択と正確な手技が伴えば、10年以上安定した経過が得られることが複数の臨床研究で証明されています。
科学的根拠に基づく長期予後
- オールセラミックの単冠クラウンは、5年間で93%が問題なく機能したというレビュー報告があります(Pjeturssonら, 2007)【1】。
- **リチウムジシリケート(e.max等)**は、10年間で単冠の成功率が約86%、インプラント上に装着した場合は約94%と高い成功率が報告されています(Teichmannら, 2017)【2】。
- **ジルコニア(特にモノリシックタイプ)**は、臼歯部に使用した場合でも5年で98%が良好に維持されたという研究があり、強度の高さが裏付けられています(Solá-Ruizら, 2021)【3】。
これらのデータは、セラミック治療が「短期的にきれいなだけ」ではなく、長期間しっかり使える治療であることを示しています。
長期予後を左右する要素
1. 材料の特性
セラミックには種類があり、適材適所で選ぶ必要があります。
- リチウムジシリケート:透明感に優れ、前歯など審美領域に適する。
- ジルコニア:強度に優れ、奥歯やかむ力の強い部位に適する。モノリシック(削り出し一体型)では破折リスクが大幅に低減。
2. 接着操作の精度
セラミック治療の成功は接着の正確さに大きく依存します。
- リチウムジシリケートは酸処理(HF酸)+シラン処理を行うことで歯と化学的に結合。
- ジルコニアはサンドブラスト処理+MDP系プライマーで安定性を確保。
- 唾液や湿気を遮断することも不可欠です。
接着操作を一つでも省略すれば、数年以内に脱離や二次むし歯のリスクが高まります。
3. 術者の技量と時間のかけ方
セラミックは「削りすぎても」「削り足りなくても」割れやすくなります。必要な厚みを確保しつつ、歯の形態や力の分散を考えた精密な形成が必要です。また、治療時間を十分に確保し、一つ一つの手順を正確に行うことが長期予後に直結します。短時間の処置ではどうしても精度が落ち、結果として寿命が短くなる傾向があります。
4. 院内の体制
セラミック治療は歯科医師だけでなく、歯科技工士・歯科衛生士・設備環境のチームワークによって支えられます。精密な型取りやCAD/CAM機器、CTによる診断が整っているかどうかも、結果に大きく関わります。調布歯科矯正歯科では、最新設備と専門スタッフの協力体制を整え、1本1本の歯に十分な時間と精度をかけて治療を行っています。
5. 咬合(かみ合わせ)の管理
セラミックが破折する最大の原因は「過度な力」です。咬合調整を丁寧に行い、力のバランスを分散させることが必要です。特に歯ぎしりや食いしばりの強い方には、ナイトガード(就寝時マウスピース)の装着が予後を大きく改善します。
患者さんができること
長持ちさせるためには、患者さん自身の協力も重要です。
- 毎日の丁寧な歯みがき
- フロスや歯間ブラシによる清掃
- 定期的な歯科検診・クリーニング
- むし歯や歯周病の早期発見
これらを守ることで、セラミックはさらに長寿命になります。
まとめ
セラミック治療は、材料の進歩と正確な接着技術、術者の経験、院内の体制が揃えば、10年以上にわたって快適に使えることが科学的に裏付けられています。調布歯科矯正歯科では、専門性の高い歯科医師チームと歯科技工士の協力体制を活かし、患者さん一人ひとりに合った材料選択と精密な治療を行っています。
「見た目の美しさ」と「長期的な安心」を両立するセラミック治療を希望される方は、ぜひご相談ください。
参考文献
- Pjetursson BE, et al. A systematic review of the survival and complication rates of all-ceramic and metal–ceramic reconstructions after an observation period of at least 3 years. Clin Oral Implants Res. 2007;18 Suppl 3:73–85.
- Teichmann M, et al. Ten-year survival and chipping rates and clinical quality grading of glass-ceramic molar crowns: A prospective clinical study. J Dent. 2017;56:41–50.
- Solá-Ruiz MF, et al. Five-year clinical evaluation of monolithic zirconia and metal-ceramic posterior fixed partial dentures: A randomized controlled trial. J Prosthodont Res. 2021;65(4):468–474.