歯科コラムcolumn
歯周病と全身疾患の深い関係。口の中が体全体に影響する理由2026/05/14
「歯周病はただの歯の病気」と思っている方はまだ多いかもしれません。しかし近年の医学・歯科学研究によって、その認識は大きく変わりつつあります。歯周病は口腔内だけにとどまらず、心臓・脳・糖尿病・早産など、全身のさまざまな疾患と深く関連していることが、多くの学術的エビデンスによって明らかになってきています。口の健康と全身の健康がつながっているというのは、今や医療の共通認識となりつつあります。
歯周病菌が全身をめぐる仕組み
歯周病が進行すると歯茎に慢性的な炎症が起きます。この炎症部位は口腔内の血管と接しているため、歯周病菌やその毒素・炎症性物質が血流に乗って全身をめぐることがあります。特に歯茎が腫れて出血しやすくなっている状態では、毎日の歯磨きや食事のたびに菌が血中に入り込むリスクがあります。健康な歯茎は細菌の全身への侵入を防ぐバリアとして機能していますが、歯周病が進行するとそのバリア機能が崩れてしまいます。
心疾患・脳卒中との関連
Tonetti らが2007年にNEJM(ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に発表した研究では、集中的な歯周治療を行ったグループで血管内皮機能が6ヶ月後に有意に改善したことが示されました。血管内皮は動脈の内側を覆う組織で、ここが正常に機能しないと動脈硬化が進みやすくなります。複数の疫学研究でも、歯周病患者において心血管疾患や脳卒中のリスクが高い傾向にあることが報告されています。
糖尿病との双方向の悪循環
歯周病と糖尿病は「双方向の悪循環」を形成することが知られています。糖尿病があると免疫機能が低下し歯周病が進行しやすくなる一方、重度の歯周病があるとインスリン抵抗性が高まり血糖コントロールが困難になります。Chapple らの研究(2013年)では、歯周治療によってHbA1cが改善する可能性が示唆されており、歯の治療が糖尿病の管理にも貢献しうることが示されています。糖尿病をお持ちの方は特に内科の主治医とも連携しながら歯周病の管理を進めることが推奨されます。
妊娠中の口腔ケアの大切さ
妊娠中の女性においては、歯周病が早産や低体重児出産のリスク因子になり得ることが複数の研究で示されています。妊娠中はホルモンバランスの変化によって歯茎が腫れやすい「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。つわりで歯磨きが辛い時期も重なるため、妊娠初期からの口腔管理が特に重要です。安定期に入ったら歯科での検診と清掃を受けることをお勧めします。
歯周病と認知症
近年、歯周病菌のひとつであるジンジバリス菌がアルツハイマー型認知症患者の脳内から検出されたという報告もあり、口腔細菌と認知機能の関連を示す研究が増えてきています。まだ因果関係が完全に解明されたわけではありませんが、口腔ケアの重要性はさらに広がりを見せています。
調布エリアでの定期検診のすすめ
歯周病があっても自覚症状が出にくいため、「痛くないから大丈夫」と思っているうちに進行していることが少なくありません。3〜4ヶ月に1回の定期検診で歯茎と骨の状態を確認し、早期発見・早期対処することが全身の健康を守ることにもつながります。調布エリアでお口の健康について気になることがある方は、いつでもお気軽にご相談ください。
参照文献:Tonetti MS, et al. Treatment of periodontitis and endothelial function. N Engl J Med. 2007;356(9):911-20. / Chapple ILC, Genco R. Diabetes and periodontal diseases. J Clin Periodontol. 2013;40 Suppl 14:S106-12.
