歯科コラムcolumn

【インプラント治療ガイド②】受けられる人・受けられない人|適応症と禁忌症2026/06/13

「インプラント治療を受けてみたいが、自分は対象になるのだろうか」「持病があるけれど大丈夫だろうか」——こうした疑問を抱える方は少なくありません。インプラント治療には、安全に治療を行うために確認すべき局所的・全身的な条件があります。本記事では、公益社団法人日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』の内容を踏まえながら、適応症と禁忌症の考え方、糖尿病・喫煙・骨粗鬆症をはじめとする全身的なリスク因子、年齢の問題、そして「できない」と言われた場合の検討余地について、できる限り具体的にご説明します。インプラントは外科処置をともなう自由診療(保険適用外)であり、適応はお口の状態・全身状態・生活習慣を総合的に評価して判断されます。東京都調布市でインプラントをご検討中の方のご参考になれば幸いです。

インプラント治療の適応症とは:基本的な考え方

「適応症(てきおうしょう)」とは、ある治療が適切な対象となる状態・条件のことです。インプラント治療においては、欠損歯の状態・骨の量と質・口腔衛生・全身状態・患者さまご自身の理解と協力という五つの軸から適応を判断するのが一般的です。これらはそれぞれ独立したチェックリストではなく、相互に関連しながら総合的に評価されます。

歯の欠損の状態と治療目標の整合

インプラント治療の対象となる欠損は、1歯欠損から複数歯欠損、さらには全顎(すべての歯を失った状態)まで幅広く対応します。ただし、欠損の原因・部位・隣在歯および対合歯(反対の顎の歯)の状態によって、インプラントが最適な選択肢かどうかは変わってきます。たとえば、隣在歯に健全な歯が残っている1歯欠損では、削らずに欠損を補えるインプラントが選択肢として検討されやすい一方、周囲の骨や歯肉の状態が不良であれば前治療が必要になる場合があります。

治療目標——咀嚼機能の回復、審美性、発音、隣在歯の保護など——が患者さまのニーズと合致しているかどうかも重要な観点です。患者さまが期待する効果と、インプラントで達成できることの間に大きな乖離があると、治療後の満足度に影響します。初診時のカウンセリングでは、こうした「何を目的に治療するか」を明確にすることが適応判断の第一歩になります。

本人の理解と協力——インフォームドコンセント

インプラント治療は外科処置と補綴処置(被せ物の作製)が組み合わさった複数回の治療であり、治療後も定期的なメインテナンスが長期にわたって必要です。そのため、治療の内容・リスク・費用・期間・代替治療についてしっかり説明を受け、患者さまご自身が納得したうえで同意(インフォームドコンセント)することが必須条件です。治療指針においても、インフォームドコンセントは治療の根幹に据えられています。

「なんとなく勧められたから」ではなく、ご自身がリスクと恩恵を理解したうえで選択することが、長期的に良好な経過を得るうえでとても大切です。疑問や不安はカウンセリングの場で遠慮なく確認してください。

局所的な条件:骨・咬合・口腔衛生

インプラントは顎骨に埋め込んで骨と直接結合(オッセオインテグレーション)させることで機能します。そのため、骨の量・質・形態は治療の可否と長期的な安定に直接影響します。

骨幅・骨高・骨質の評価

インプラントを埋め込むには一定以上の骨の「幅」と「高さ」が必要です。骨量が不足する場合でも、骨造成(こつぞうせい)という補助的な外科処置によって適応が広がることがあります。骨造成の詳細は第5回・骨が足りない場合の骨造成(GBR・サイナスリフト等)で詳しく解説しています。

骨質(皮質骨と海綿骨のバランス)もオッセオインテグレーションの成立に影響します。一般的に上顎は下顎より骨質が軟らかい傾向があり、特に上顎奥歯部では骨量・骨質の両面から慎重な評価が必要です。CT(コーンビームCT=CBCT)による三次元的な骨量・骨質の評価が、現代のインプラント診断の標準的なアプローチです(詳細は第3回・治療の流れと検査・診断で解説します)。

また、下顎では下歯槽神経(かしそうしんけい)、上顎では上顎洞(じょうがくどう)という解剖学的な構造物を避けてインプラントを埋入する必要があります。これらの位置をCTで正確に把握することが、神経損傷や上顎洞への穿孔などの合併症を防ぐうえで不可欠です。

対合歯と咬合(かみ合わせ)の状態

インプラントは天然歯のように歯根膜(しこんまく)を持ちません。歯根膜は咬む力を感知して緩衝する役割を担っていますが、インプラントにはその機構がないため、過大な咬合力(強すぎる咬み合わせ)がかかると機械的トラブル(スクリューの緩みや破折など)や、支持骨の吸収につながるリスクがあります。

そのため、対合歯の状態(天然歯か補綴歯か、咬合高径は適切か)、ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)の有無、咬合力の強さなどを事前に評価することが重要です。ブラキシズムがある場合は、ナイトガード(マウスピース)の装着など咬合管理が治療計画に組み込まれます。咬合の乱れが著しく管理困難な場合は、インプラントの予後に影響するため慎重な判断が求められます。

歯周病の管理と口腔衛生状態

インプラント治療の前提として、口腔内が清潔に管理できていることが求められます。残っている天然歯に歯周病(しゅうそうのうよう)が進行している場合や、プラーク(歯垢)コントロールが著しく不良な場合には、まず歯周治療を行って口腔内を安定させることが原則です。

歯周病の原因菌はインプラント周囲炎(インプラントを支える骨が溶ける病気)の原因にも関与します。治療前から口腔内に病原性の高い菌が多い状態では、インプラントの長期的な安定が損なわれるリスクが高まります。歯周病のコントロールは、インプラントの適応判断において極めて重要な局所的要件のひとつです。

また、歯磨きや補助清掃用具(歯間ブラシ・フロス)の使い方が習慣化されているかどうか、日常的な口腔清掃への意欲があるかどうかも、長期的な予後を左右する重要な要因です。インプラント治療後のメインテナンスについては第9回・メインテナンスとインプラント周囲炎で詳しく解説しています。

全身的なリスク因子:代表的な疾患と管理の考え方

インプラント治療の適応を左右する全身的なリスク因子としては、糖尿病・喫煙・骨粗鬆症(およびその治療薬)・循環器疾患・ステロイド療法・放射線治療・自己免疫疾患などが知られています。これらは「必ず禁忌」ではなく、コントロールの状態・重症度・他の条件との組み合わせによって判断が変わります。いずれも自己判断せず、かかりつけの内科や専門科と歯科が連携しながら対応することが重要です。

糖尿病:血糖コントロールと創傷治癒への影響

糖尿病(とうにょうびょう)はインプラント治療において特に注意が必要な全身疾患のひとつです。血糖コントロールが不良な状態では、創傷(外科処置後の傷)の治癒が遅れるリスクや、感染に対する抵抗力が低下するリスクが高まることが知られています。インプラント埋入後にオッセオインテグレーション(骨結合)が十分に成立しないリスクも、コントロール不良の糖尿病では高まる可能性があります。

血糖コントロールの指標としてよく用いられるのがHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。HbA1cは過去1〜2か月の平均的な血糖レベルを反映する検査値で、内科での定期検査で確認できます。一般的に、HbA1cが一定の水準以下にコントロールされている場合(目安についての具体的な数値は主治医と確認してください)は、適切な管理・モニタリングのもとでインプラント治療が検討できるとされています。ただし、HbA1cの許容水準は患者さまの全身状態や薬物療法の内容によって異なるため、内科主治医と歯科医師が情報を共有しながら総合的に判断することが求められます。

糖尿病があるからといって一律に「インプラントはできない」と結論づけるのは正確ではありません。血糖が良好にコントロールされており、口腔衛生も適切に管理できる状況であれば、慎重な適応判断のうえで治療が行われるケースはあります。ただし、術前・術後の感染対策の強化、治療期間中の血糖モニタリング、術後の定期的な経過観察が通常以上に重要になります。治療前には必ず内科主治医に歯科治療を受けることを伝えておきましょう。

喫煙:インプラント失敗リスクと周囲炎リスクの増大

喫煙は、インプラント治療に関わる全身的リスク因子のなかでも、患者さま自身の行動変容によって改善できる要因として特に注目されます。喫煙がインプラントの予後に与える影響として、現在のエビデンスが示す主な点は次のとおりです。

  • オッセオインテグレーション(骨とインプラントの結合)の成立を妨げる可能性がある
  • インプラントの失敗(脱落・骨結合不全)リスクが非喫煙者より高まる傾向がある
  • インプラント周囲炎(インプラントを支える骨が吸収される病態)のリスクが増す
  • 術後の創傷治癒が遅れる可能性がある

これらのリスクは喫煙量や喫煙年数にも関連するとされています。治療前に禁煙できれば、リスクを大幅に低減できる可能性があります。禁煙外来の活用なども含め、治療計画を立てる段階で歯科医師に相談することをお勧めします。喫煙者に対してインプラント治療を行う場合は、リスクについて十分に説明したうえで、禁煙の意欲と管理の徹底が前提条件となります。

なお、電子タバコ(加熱式タバコを含む)についても、従来のタバコと同様のリスクがゼロではないとの見解があります。喫煙に関しては、種類を問わず歯科医師に正直に申告することが大切です。

骨粗鬆症とBP製剤・デノスマブ:MRONJへの注意

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨密度が低下して骨折しやすくなる疾患で、特に閉経後の女性や高齢者に多く見られます。インプラント治療との関係で注意が必要なのは、骨粗鬆症の治療薬として広く使われているビスフォスフォネート製剤(BP製剤)およびデノスマブ(抗RANKL抗体)の影響です。

これらの薬剤を使用している場合、外科処置(抜歯・インプラント埋入など)をきっかけに「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ:Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)」と呼ばれる重篤な合併症が生じることがあります。MRONJは顎骨の壊死(えし)が起こる病態で、治療が難しく、口腔外科的な対応を要するケースもあります。

ただし、重要な点として、骨粗鬆症の治療目的で使用される内服薬(経口剤)の用量では、MRONJ発症の頻度は比較的低いとされています(ただし皆無ではありません)。一方、がんの骨転移治療目的で使われる高用量の注射製剤では、発症リスクが顕著に高まることが知られています。どちらの薬剤も、使用期間・用量・他の全身状態との組み合わせによってリスクの大きさが変わります。

BP製剤やデノスマブを使用している患者さまがインプラント治療を検討する場合には、以下の点が特に重要です。

  • 内科・整形外科・骨粗鬆症専門医と歯科医師の医科歯科連携が不可欠
  • 薬剤の種類・投与量・投与期間・投与経路(内服か注射か)を歯科医師に正確に伝える
  • 「休薬(シャッフベーセレーション)」については自己判断で中断しない——主治医と歯科医師が連携して判断する
  • 場合によっては外科処置を行わない代替治療(ブリッジ・入れ歯)を検討することもある

薬を自己判断でやめることは骨折リスクを高める可能性があり、非常に危険です。インプラントを希望する場合も、まず主治医に相談し、薬剤管理と外科処置のタイミングについて医科歯科で協議することが大原則です。

その他の全身的リスク因子

糖尿病・喫煙・骨粗鬆症以外にも、以下のような全身状態がインプラント治療の適応判断に影響します。

抗凝固薬・抗血小板薬の使用:心疾患・脳血管疾患・不整脈などで抗凝固薬(ワルファリン・直接作用型経口抗凝固薬DOACなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)を服用している場合、外科処置時の出血が止まりにくくなる可能性があります。これらの薬剤も自己判断で中断することは危険であり、主治医と歯科医師が連携して処置前後の対応を決定します。

コルチコステロイド(ステロイド)の長期使用:免疫抑制・抗炎症目的で長期にわたってステロイドを使用している場合、感染への抵抗力の低下や骨密度の低下(薬剤性骨粗鬆症)が生じることがあります。インプラントの骨結合や術後の治癒に影響する可能性があるため、ステロイドの用量・使用期間・原疾患の状態とあわせて慎重に評価されます。

頭頸部への放射線治療歴:がんの治療目的で顎顔面頭頸部に放射線照射を受けた場合、照射された骨は血流が減少し治癒能力が著しく低下します(放射線性骨壊死のリスク)。インプラントの骨結合が得られにくいだけでなく、外科処置自体が顎骨壊死を引き起こすリスクがあるため、放射線治療後のインプラントは非常に慎重な適応判断が求められます。照射線量・照射範囲・照射からの経過期間などを考慮したうえで、専門的な判断が必要です。

自己免疫疾患・免疫不全:関節リウマチ・全身性エリテマトーデス(SLE)・シェーグレン症候群などの自己免疫疾患は、疾患そのものや治療薬(免疫抑制薬・生物学的製剤)が感染リスクや骨代謝に影響することがあります。HIVなどの免疫不全も同様です。疾患のコントロール状態や使用薬剤によって判断は異なります。

心疾患・重篤な全身疾患のコントロール不良:未コントロールの高血圧・重篤な心疾患・腎不全・肝不全など、全身状態が不安定な場合は、外科処置に耐えられるかどうかを内科的に評価してから判断します。状態が安定していれば治療が検討できるケースもあります。

絶対的禁忌と相対的禁忌:「できない」のレベルを理解する

インプラント治療における禁忌(きんき)は、「絶対的禁忌」と「相対的禁忌」に分けて理解するとわかりやすくなります。

分類 意味 主な例
絶対的禁忌 いかなる状況でもインプラント治療を行うべきではない状態 重篤な全身疾患でコントロールが著しく不良な場合・高用量BP製剤の静脈注射中(がん骨転移治療)・頭頸部への大量放射線照射後で骨壊死リスクが非常に高い場合・成長発育が未完了な場合(骨格の成長が続いている若年者)・患者さまがインフォームドコンセントを理解できない場合など
相対的禁忌 条件次第で(前処置・コントロール改善・専門科との連携等により)治療が検討できる可能性がある状態 コントロール可能な糖尿病・喫煙者(禁煙意欲あり)・経口BP製剤の使用(用量・期間・原疾患のリスク評価後)・抗凝固薬使用中(主治医と連携して対応)・コントロール良好な自己免疫疾患・骨量不足(骨造成で改善できる場合)など

「絶対的禁忌」に該当する状態は、インプラント治療自体を行うことで患者さまに重大な健康被害をもたらすリスクが著しく高い場合です。一方「相対的禁忌」は、リスクが高まる状態ではあるものの、前提条件の整備や専門的な管理によって治療の検討余地がある状態を指します。重要なのは、「禁忌かどうか」の判断は歯科医師と関係する診療科が連携しながら個別に行うものであり、ウェブで調べた情報だけで自己判断できるものではないという点です。

「ほかの歯科医院でインプラントはできないと言われた」という場合でも、理由が何であるかによって、別のアプローチで対応できる可能性があります。まずは禁忌の理由を丁寧に確認することが出発点になります。

年齢の考え方:成長期と高齢者それぞれの視点

インプラント治療において年齢は重要な判断要素ですが、「何歳以上なら可、何歳以下なら不可」という単純な線引きではなく、成長の状態や全身的な健康状態を踏まえた個別の評価が求められます。

成長期:骨格の成長完了を待つことが原則

インプラントは顎骨に固定される装置であり、天然歯のように骨の成長に合わせて移動する機能がありません。そのため、顎骨の成長が続いている期間(成長期)にインプラントを埋入すると、周囲の骨・歯・咬み合わせの発育とともに位置がずれ、機能的・審美的な問題が生じる可能性があります。

一般的に、顎骨の成長はおおむね女性で15〜16歳以降、男性では17〜18歳以降に完了するとされますが、個人差があります。成長の完了を判断するためには、手のX線による骨端(こったん)の評価や、定期的なセファログラム(頭部X線規格写真)での比較などが用いられます。成長が完了したことを確認してからインプラントを行うことが原則であり、成長期の若年者は絶対的禁忌ないし慎重適応となります。

ただし、先天性無歯症(生まれつき歯が生えない状態)など、成長期でもインプラント以外に合理的な代替手段がない特殊なケースでは、専門的な判断のもとで例外的な対応が検討されることもあります。

高齢者:全身状態次第で検討可能——治療指針2024の視点

一方、上限年齢については「何歳まで」という明確な基準はありません。日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』の改訂においても、高齢者のインプラント治療への対応が重要な柱のひとつとして位置づけられています。超高齢社会において、高齢者の口腔機能の維持・向上はQOL(生活の質)に直結するという観点から、インプラント治療の有用性が改めて評価されています。

高齢者に対してインプラント治療を行う際に特に重視される点は次のとおりです。

  • 全身状態の評価:複数の疾患(多疾患併存)や多種類の薬剤の服用(ポリファーマシー)が一般的であり、内科主治医との連携が特に重要
  • 認知機能と口腔清掃の管理能力:術後のメインテナンスを適切に継続できるかどうか
  • 外科的侵襲への耐容性:心肺機能・腎機能など全身機能の予備力
  • 骨密度と骨質:加齢とともに骨密度が低下し、オッセオインテグレーションの成立や骨の長期安定に影響する場合がある
  • 社会的・家族的サポートの有無:術後の管理・通院をサポートする環境があるかどうか

これらを総合的に評価したうえで、患者さまの希望・QOLの観点から、インプラントが有益かどうかを個別に判断します。年齢を理由に一律に「できない」とはなりませんが、年齢とともに全身状態・認知機能・回復力が変化することを踏まえた慎重な対応が求められます。

「インプラントはできない」と言われても検討余地がある場合

インプラント治療を相談した際に「難しい」「できない」と言われた場合でも、その理由によっては、追加の対応や専門的な前処置によって適応が広がる可能性があります。ただし、すべての状況で解決できるわけではなく、誇張した期待は禁物です。以下はあくまで「場合によっては検討の余地がある」という例示です。

骨量不足の場合:骨造成という選択肢

最も多い「できない」理由のひとつが、骨の量や高さの不足です。歯を失ってから長期間が経過すると、その部位の骨は徐々に吸収・萎縮(いしゅく)していきます。しかし、GBR(骨誘導再生法)・ソケットリフト・サイナスリフト(上顎洞底挙上術)などの骨造成処置によって、骨量を補いインプラントの埋入が可能になるケースがあります。

骨造成はインプラント本体の埋入より先に行う場合、あるいは同時に行う場合があります。治療期間が延びたり、追加の外科処置が必要になったりしますが、適切な適応判断のもとで行われれば、骨量不足が理由でインプラントを断念する必要がなくなることもあります。骨造成の詳細については第5回・骨が足りない場合の骨造成(GBR・サイナスリフト・ソケットリフト)で詳しく解説しています。

全身疾患のコントロール改善によって適応が変わる場合

糖尿病のHbA1cが改善する・禁煙が成功する・骨粗鬆症治療薬の見直しが主治医と協議できる、といった全身状態の改善によって、相対的禁忌の状態から適応が変化するケースもあります。「今は難しい」という判断が、一定期間の医療的管理ののちに「慎重に進めることができる」に変わることがあります。

ただし、全身疾患の状態が改善しないまま強行するのは本末転倒です。あくまで安全が担保された範囲での選択肢の拡大であることを忘れないでください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 糖尿病があるとインプラントは絶対にできないのですか?

糖尿病があるからといって一律に不可ではありません。血糖コントロールが適切に行われており(HbA1cの目安については主治医と確認)、口腔衛生の管理も良好であれば、内科主治医との医科歯科連携のもとで慎重にインプラント治療が検討されるケースはあります。ただし、コントロール不良の糖尿病は創傷治癒の遅延や感染リスクを高めるため、まず血糖コントロールの改善が優先されます。担当の内科医と歯科医師の双方に現状を正直に伝えることが大切です。

Q2. タバコを吸っていますが、インプラントはできますか?

喫煙はインプラントの失敗リスクやインプラント周囲炎のリスクを高めることが知られており、慎重な適応判断が求められます。禁煙できれば理想的ですが、治療前に喫煙を止め、治療後も禁煙を継続することでリスクを低減できる可能性があります。喫煙者の場合、リスクについて十分な説明を受けたうえで治療方針を決定することが重要です。喫煙の事実は必ず歯科医師に申告してください。

Q3. 骨粗鬆症の薬(ビスフォスフォネート)を飲んでいますが、インプラントは危険ですか?

経口のビスフォスフォネート製剤(内服薬)の用量で使用している場合、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の発症頻度は比較的低いとされていますが、リスクがゼロではありません。注射製剤(特に高用量ながん骨転移治療用)ではリスクが顕著に高まります。インプラント治療を希望する場合は、必ず骨粗鬆症の主治医(内科・整形外科など)と歯科医師が連携して判断します。薬剤を自己判断でやめることは骨折リスクを高めるため、絶対に主治医の指示なく中断しないでください。

Q4. 何歳からインプラントは受けられますか?また高齢者はどうですか?

骨格の成長が完了していない若年者(おおむね18歳未満を目安。個人差あり)は原則、顎骨の成長完了を待ってからインプラント治療を行います。上限年齢は設けられていませんが、高齢になるほど全身疾患・服薬状況・骨密度・認知機能などを総合的に評価して適応を判断します。年齢だけを理由に一律に断られることはありませんが、全身的なリスク評価と医科歯科連携がより重要になります。

Q5. 骨が足りないと言われました。インプラントはあきらめるしかないですか?

骨量が不足している場合でも、骨造成(GBR・サイナスリフト・ソケットリフトなど)という補助的な外科処置によって、インプラントができる条件を整えられる場合があります。ただし骨造成が可能かどうかは骨の状態・全身状態・費用・治療期間などを総合的に判断したうえで決まります。詳細は第5回・骨が足りない場合の骨造成をご覧いただくか、担当歯科医師にご相談ください。

Q6. 心臓の薬(抗凝固薬)を飲んでいます。インプラントの外科処置は受けられますか?

抗凝固薬や抗血小板薬を使用している場合でも、内科主治医と歯科医師が連携して服薬管理と外科処置のタイミングを調整することで、インプラント治療が検討できるケースがあります。薬を自己判断でやめると血栓・塞栓症のリスクが高まるため、絶対に主治医の指示なく中断しないでください。かかりつけ医に歯科治療を受ける旨を必ず伝え、情報を共有することが重要です。

まとめ:適応判断は「総合的な評価」から

インプラント治療を受けられるかどうかは、単一の条件で決まるものではなく、口腔内の局所的な状態(骨量・骨質・歯周病・咬合)と全身的な状態(糖尿病・喫煙・骨粗鬆症・服薬状況・年齢など)を組み合わせた総合的な評価によって判断されます。

本記事のポイントを整理します。

  • 適応症の基本は「骨量と骨質が十分か」「口腔衛生が管理できているか」「全身状態が外科処置に耐えられるか」「患者さまが治療内容を理解し協力できるか」の4点
  • 糖尿病・喫煙・骨粗鬆症(BP製剤・デノスマブ)は代表的なリスク因子だが、コントロール状態によって相対的禁忌として慎重適応となる場合もある
  • 絶対的禁忌(コントロール不良の重篤な全身疾患・成長期・高用量注射BP製剤使用中のがん治療患者など)に該当する場合は、インプラント治療自体が適切でない
  • 成長期の若年者は骨格の成長完了を待つことが原則。高齢者は年齢だけでなく全身状態・認知機能・サポート環境を評価する
  • 「できない」と言われた場合でも、骨造成や全身状態のコントロール改善によって適応が広がる可能性がある——ただし誇張した期待は禁物
  • いずれのケースも、医科歯科連携と丁寧なインフォームドコンセントが前提

インプラントは自由診療(保険適用外)の外科処置であり、適応・リスク・費用・期間には個人差があります。「自分は受けられるかどうか」は、インターネットの情報だけでは判断できません。まずは歯科医院での精密検査・診断(詳しくは第3回・治療の流れと検査・診断をご参照ください)を受けることが、最も確実な第一歩です。

調布でインプラント治療をご検討の方へ

調布歯科・矯正歯科では、検査・診断にもとづき、患者さま一人ひとりのお口の状態やご希望をふまえた治療計画をご説明しています。インプラントは外科処置をともなう自由診療であり、適応やリスクには個人差があります。疑問や不安な点は、カウンセリングの際にお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とした解説であり、特定の治療効果を保証するものではありません。診断・治療方針は個々の口腔内・全身状態により異なります。インプラント治療は自由診療(保険適用外)で、外科処置にともなうリスク・副作用が生じる可能性があります。詳しくは歯科医師にご相談ください。参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』。

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